川越大吾の醍醐味ブログ

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速球から変化球まで:スタットキャストが見る球種の世界 (後編:変化球・オフスピード系)

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前回は速球系のボール(フォーシーム、シンカー、カッター)をスタットキャストのデータで見てきました。今回はその後編!チェンジアップ、スプリッター、スライダー、そして最近話題のスイーパーなど、いわゆる変化球やオフスピード系のボールが、データ上どういう特徴を持っているのか、そして「半速球」という言葉とどう関わるのかを探っていきましょう。

スタットキャストによる変化球・オフスピード系の分類

  1. チェンジアップ (Changeup / CH):
  • どんな球?: これぞ「半速球」の代表格!一番の武器は、ピッチャーがストレートと全く同じ腕の振りで投げてくるのに、ボールのスピードがガクンと遅いこと。だいたいストレートより8~15 mph(約13~24km/h)くらい遅いのが普通です。これでバッターのタイミングを完璧にずらします。握り方(サークルチェンジとかパームボールとか)によって、沈んだり(ドロップ)、利き腕の方向に逃げるように変化(フェード/ラン)したりすることが多いです
  • データの特徴: ストレートとの明確な球速差。沈み込みや利き腕方向への変化が多い。回転数はストレートより低い傾向。スタットキャストでの略称はCH。前田健太投手のチェンジアップのすごさもデータで証明されています
  • 役割: バッターのタイミングを外す(緩急)、空振りや弱いゴロを打たせる。
  1. スプリッター (Splitter / FS) / フォークボール (Forkball / FO):
  • どんな球?: 人差し指と中指でボールを深く挟んで(スプリットフィンガー)投げるボール。これもストレートに近い腕の振りから投げられ、バッターの手元で急激にストンと落ちるのが最大の特徴。スピードはチェンジアップより速く、ストレートより遅いことが多いです。空振りを取る能力が非常に高いボールです。日本ではフォークボールと呼ばれることが多いですね。
  • データの特徴: チェンジアップとストレートの中間の球速帯。非常に大きな縦の変化(ドロップ)。回転数がすごく低いのが特徴です。スタットキャスト略称はFS(スプリッター)かFO(フォーク)。最近はシンカーとスプリッターのハイブリッド「スプリンカー(Splinker)」なんて球種も出てきています
  • 役割: 空振りを取る(決め球)、ゴロを打たせる。
  1. スライダー (Slider / SL):
  • どんな球?: 変化球(ブレーキングボール)の代表格。カッターよりはスピードが遅いけど、カーブよりは速いことが多いです。ピッチャーの利き腕と反対方向(グラブサイド)に曲がりながら、下に落ちる(ドロップ)のが一般的 。曲がり方や鋭さはピッチャーによって様々です。
  • データの特徴: ストレートとカーブの中間の球速帯。グラブサイドへの横変化と縦の落下。回転数は高い傾向。空振りを取る能力が高いです。スタットキャスト略称はSL
  • 役割: 空振りを取る、バットの芯を外す。
  1. スイーパー (Sweeper / ST):
  • どんな球?: 最近めちゃくちゃ注目されている、スライダーの仲間です。最大の特徴は、従来のスライダーよりも、とにかく横に大きく曲がる(スイープする)こと。多くの場合、普通のスライダーより少しスピードが遅めで、その分ボールがゾーンを横切る(スイープする)時間が長くなります。普通のスライダーの横変化が平均6インチ(約15cm)なのに対し、スイーパーは平均15インチ(約38cm)も曲がることがあるとか!その動きから「フリスビー・スライダー」なんて呼ばれることも。ボールの縫い目の向きを利用した「シーム・シフテッド・ウェイク」という現象で、予測以上に曲がることもあるそうです
  • データの特徴: スライダー系の球速(やや遅め)。ものすごく大きいグラブサイドへの横変化。縦の変化は普通のスライダーより小さいことも。2023年からスタットキャストの正式な球種分類(ST)に追加されました
  • 役割: 大きな横変化でバットの芯を外し、弱い打球や空振りを誘う

分類の難しさと「連続性」

大事なのは、これらの球種分類はあくまで分かりやすくするためのカテゴリー分けで、実際のボールがいつもきれいに分けられるわけじゃない、ということです。

  • カッターとスライダーの境界線: スピードが速くて変化が小さいスライダーは、カッターと見分けがつきにくいことがあります。ジェイコブ・デグロム投手の「スライダー」は、データ的にはカッターに近いと言われることも。「スラッター」 なんていう中間の呼び名があること自体、境界が曖昧なことを示しています。
  • チェンジアップとスプリッターの境界線: 握り方が違うと言われますが、実際のボールの動きや回転数が似ていることもあります。どっちに分類されるかは、ピッチャー本人の呼び方や、分析システムの判断基準による場合もあります
  • スライダーとスイーパーの区別: スイーパーは、横変化が極端に大きいというデータ上の特徴から、新しいカテゴリー(ST)が作られました。データ分析が新しい球種の認識を生んだ例ですね。

さらに、スタットキャストの分類は、ピッチャー本人がどう呼んでいるかを尊重する面もあるので、ボールの物理的な特徴がそっくりでも、ピッチャーが違う名前で呼んでいれば、違う球種として分類されることもあるんです(例:デグロム投手のスライダー vs. リン投手のカッター )。

結論:データの中身を見よう!

だから、「半速球」という言葉を単純に特定の球種に当てはめるのではなく、そのボールが持つ具体的なデータ(球速、変化量、回転など)に注目することが、本当の理解につながります。球種の名前はあくまで目印。その中身である物理的な特性こそが、ボールの効果を決めているんです。

変化球・オフスピード系ボールのデータ比較(MLB平均/典型的範囲)

球種

略称

平均球速 (mph)

平均水平変化 (in) ※捕手目線

平均垂直変化 (in) ※捕手目線, 重力込

平均回転数 (RPM)

主な変化方向/特徴

スライダー

SL

82-88

4-12 (グラブサイド方向)

45-60 (落下)

2200-2800+

グラブサイドへの変化、落下

スイーパー

ST

80-85

12-20+ (グラブサイド方向)

50-65 (SLより落下小の場合も)

2300-2700

グラブサイドへの非常に大きな水平変化(スイープ)

チェンジアップ

CH

80-88

8-16 (利き腕方向が多い)

50-65 (沈み込み)

1500-2000

球速差、沈み込み、利き腕方向への変化(フェード)

スプリッター

FS

84-90

< 10 (左右対称に近い場合も)

55-70+ (大きな落下)

1200-1800

大きな落下(ドロップ)、回転数低

注: これはあくまで一般的な目安です。変化量はStatcast基準(重力込み、捕手目線)。水平変化の正負は右投手の場合、負がグラブサイド(左打者方向)、正が利き腕サイド(右打者方向)。垂直変化は値が大きいほど落下大。

 

これで、スタットキャストが分類する主要な球種を見てきました。次回は、これらの球種が実際のピッチング戦略の中で、どのように使われているのか、「緩急」や「欺瞞性」といった観点からデータで読み解いていきます!