川越大吾の醍醐味ブログ

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バッターはどう戦う?「打ちにくい球」と「打ちごろの球」の見極め

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これまではピッチャー目線で、「半速球」的なボールのデータや戦略を見てきました。今回は視点をガラッと変えて、バッターがこれらのボール、つまりタイミングを外すチェンジアップや、鋭く変化するスライダー、あるいは「おっ、これは打てるぞ?」と思ってしまうような失投に、どう立ち向かっているのかを探ってみましょう。

バッターの悩み:ボールの見極めが難しい!

前回お話ししたように、良いピッチャーは違う球種でもできるだけ同じ軌道に見せる「ピッチトンネル」を使ってきます。バッターは、ピッチャーのリリースポイントや腕の振り、ボールの回転(スライダーの赤い点とか、カーブの縦回転とか)といった、ほんのわずかな情報から「これはストレートだ!」「いや、変化球か?」と必死に判断しようとします。でも、特にボールが手元で変化したり、巧妙に偽装されたりすると、見極めるのはめちゃくちゃ難しいんです。

なぜ「半速球」的なボールは厄介なのか?

  1. スピードで騙される: チェンジアップ(CH)やスプリッター(FS)は、バッターが「速い球が来る!」と予測しているタイミングを裏切ります。体が前に突っ込んだ状態でスイングすることになり、空振りしたり、ボールの上っ面を叩いて弱いゴロになったり、下を叩いてポップフライになったり…。タイミングを崩される典型ですね。
  2. 変化で騙される: カッター(FC)の遅れて小さく鋭く曲がる変化 や、スライダー(SL)/スイーパー(ST)の急激な、あるいは大きく曲がり落ちる変化 は、バッターの振ったバットの軌道をかわします。スイングを始めた時の予測位置からボールが大きく動くので、バットの芯で捉えるのが非常に難しくなります。特に内角に食い込むカッターはバットを詰まらせやすいです
  3. 「予測外」の動きに騙される: スタットキャストの「平均比較変化量」の話、覚えていますか? バッターは無意識のうちに「このくらいのスピードなら、これくらい曲がるだろう/落ちるだろう」と予測しています。その予測から大きく外れるボール(例:平均より"ホップ"するストレート、平均より大きく"落ちる"カーブ)は、バッターの感覚を狂わせ、打ち損じを誘発します。

データが示す「打たれ方」

スタットキャストのデータは、どんなボールがどんな打球結果になりやすいかも教えてくれます。

  • "ライズ"するフォーシーム: バッターのスイングの上を通過して空振りを取ったり、打ち上げさせてポップフライにしたりしやすい
  • シンカーやスプリッター: 沈む軌道でゴロを打たせやすい
  • スイーパー: 普通のスライダーよりフライやポップフライになりやすいかも?という指摘も
  • カッター: 内側への鋭い変化でバットをへし折ることも

バッター側のデータとしては、打球の速さ(Exit Velocity / EV)打球の角度(Launch Angle / LA)強い打球の割合(Hard-Hit Rate、EV 95mph以上)などがあります。効果的な変化球やチェンジアップは、これらの数値を低く抑える(=弱い打球を打たせる)傾向があります。

じゃあ、「打てる半速球」って何?

一方で、「半速球」という言葉には、「これはチャンスボールだ!」というポジティブ(?)な意味合い、つまり「打ちごろのボール」というニュアンスが含まれることもあります。これは、本来バッターを打ち取るはずのボールが、その役割を果たせなかった時に起こります。

  • スピード差がない: チェンジアップなのに、ストレートとあまりスピードが変わらない。
  • 変化しない: スライダーやカーブが曲がりきらず、甘いコースにフワッと来てしまう、いわゆる「失投(hanging pitch)」。
  • コースが甘い: どんな球種でも、ストライクゾーンのど真ん中(middle-middle)に来たら、打たれるリスクは高まります。

このように、ピッチャーが意図した効果を発揮できなかったボール、つまり「投げ損ない」が、「半速球」という言葉のネガティブなイメージと結びつくことがあるんですね。

「打ちにくい」にも色々ある

ここで大事なのは、スピードが遅いから、あるいは変化が大きいからといって、そのボールがすぐに「悪いボール」や「打ちやすいボール」になるわけではない、ということです。

効果的なチェンジアップ、スライダー、スイーパーなどは、まさにそのスピード差や変化量によってバッターを打ち取るように「設計」されています。これらは、速いストレートとは違う方法で、バッターにとって打ちにくいボールなんです。

この「意図された打ちにくさ」と、単に投げ損なった「打ちごろの失投」とを区別することが重要です。後者が「半速球」の残念なイメージと重なることはありますが、前者は現代野球における高度なピッチング技術の表れと言えるでしょう。

次回は、これらの「半速球」的なボールを武器に活躍した名ピッチャーたちを、スタットキャストのデータと共に紹介します!