「デフレとは物価が下がることだ」と習った。
でも最近、もっと本質的な定義があるんじゃないかと思っている。
デフレとは、質を見なくなることだ。
きっかけは、コインケースだ。
配達の仕事をしていると小銭を持ち歩くことが多い。駐車場の精算、自販機、両替。だからコインケースはずっと使っている。長年愛用してきたのは、百均で買った「3個で100円」のやつだった。
「コインケースなんて何でもいい」
そう思っていた。比較するまでは。

左:百均の3個100円ケース 右:オープン工業の1個100円ケース
比べて初めて気づいた「差」
ある日、文房具メーカー・オープン工業のコインケースを買った。1個100円。
「同じようなもんでしょ」と思いながら並べた瞬間、気づいた。
全然違う。
| 比較項目 | 百均(3個100円) | オープン工業(1個100円) |
|---|---|---|
| サイズ感 | コインより少し余裕がある。振るとカタカタ動く | コインの直径・厚みにぴったり合わせて設計。グラつかない |
| 開閉部 | 使っているうちにツメが甘くなってくる | ツメがしっかりしていて、何度開け閉めしてもヘタれない |
| 総合 | 「使えないわけではない」レベル | 設計の意図が伝わってくるレベル |

左の百均のコインケースは、コインの直径より1mmほど余裕がある
でも、これは「並べないと分からない」
ここが一番言いたいところだ。
1個だけ持っていたら、どちらも「普通のコインケース」として機能する。
百均のケースだって、コインは入る。開け閉めもできる。不満を感じるほどではない。だから「3個100円でいいじゃん」という結論になる。
問題は、比較する発想自体が生まれなくなっていることだ。
コインケースが欲しい → 百均に行く → 一番安いものを選ぶ。
この判断は合理的に見える。でも実は、最初から「百均の中」で思考が止まっている。オープン工業のケースを「比較対象」として考えたことがある人は、どれくらいいるだろう。
デフレとは、質を見なくなることだ
「デフレ=物価が下がること」は定義としては正しい。でも現象としての本質は違うと思う。
質を評価する目が失われた。
それがデフレの本当の正体ではないか。
消費者が価格だけを見る。だから企業は「安く作ればいい」になる。品質を下げてもコストを削れば売れる。そしてさらに消費者は「安いもので十分」という感覚を強化していく。
このループを、私たちは長い間「賢い消費」と呼んでいた。

オープン工業のロゴ。メーカーの矜持が見える
1個100円を「高い」と感じた瞬間に立ち止まってほしい
正直に言うと、私も最初に「1個100円か……」と思った。3個100円が当たり前になっていたから。
でも並べてみたら分かった。オープン工業のケースには、コインのサイズに合わせた設計がある。開閉部の強度への配慮がある。作り手の意図がある。
それが100円に込められている。
3個100円の方が「お得」なのは間違いない。でも「お得かどうか」しか判断基準がないとしたら、それはデフレが作り上げた価値観かもしれない。
まとめ
デフレとは物価が下がることではなく、質を見なくなることだ。
比較して初めて分かることが、コインケースにも、経済にも、きっとある。
一度でいいから、並べてみてほしい。