配達員から見えた「人手不足の正体」——自動化で現場は楽になったか?
毎日、飲食店とコンビニに出入りしている。そこで気づいたことがある。
僕はUber Eatsや出前館の配達員として、毎日複数の飲食店とコンビニに出入りしている。ピックアップのたびに店内に入るから、スタッフの動きや表情が自然と目に入る。
最近ずっと気になっていることがある。どこも人が少ない。そして、残っているスタッフがとにかく忙しそうだ。
配膳ロボットが動き回り、セルフレジが並ぶ店内。自動化が進んでいるはずなのに、なぜ現場はこんなに慌ただしいのか。毎日見ているうちに、一つの仮説が浮かんできた。
ロボットが来てから、スタッフはむしろ忙しくなった
以前の飲食店なら、ホールに数人いて、一人が配膳、一人がドリンク、一人がレジ——という感じで役割が分散されていた。配膳は体力がいる仕事だ。でも「どのテーブルに何を運ぶか」は基本的にオーダー票を見れば決まる。慣れれば体が動く、判断が少ない作業だった。
それがロボットに置き換わった今、残ったスタッフは何をしているか。クレーム対応、調理補助、ロボットが詰まったときの対処、Uber Eatsの注文確認——ぜんぶ判断が必要な仕事ばかりだ。頭を使い続けないといけない。
ピックアップで待っていると、明らかに余裕のない顔のスタッフが「少々お待ちください」と言いながら三つも四つも仕事を同時にこなしている場面をよく見る。ロボットが来る前より、一人ひとりの密度が上がっているように感じる。
残った仕事がぜんぶきつくなった。
コンビニも同じことが起きている
コンビニのピックアップも毎日ある。セルフレジが普及して、レジ打ちの負担は減ったはずだ。でも店員さんの手は止まらない。
宅配便の受け取り、マルチコピー機のトラブル対応、電子マネーのチャージ案内、公共料金の支払い処理、セルフレジで詰まったお客さんへのフォロー……。かつてのレジ打ちと比べて、一件一件の対応に必要な知識と判断の量が全然違う。
それでいて、求人票を見ると今も最低賃金ギリギリの時給が並んでいる。2025年度に最低賃金は全国平均で1,121円まで引き上げられたが、これは法律で強制されたからであって、業務の難しさが上がった分を経営側が自発的に評価した結果ではない。
「割に合わない」と感じた人から辞めていく
これは僕の肌感覚だけど、配達をしていると「慣れた人が少ない店」と「ベテランが揃っている店」の差がはっきりわかる。前者はピックアップのたびに待たされ、注文が間違っていることもある。後者はスムーズで、受け渡しも丁寧だ。
人手不足で一番困るのは「慣れた人が辞めること」だ。業務密度が上がった現場で、それに見合う賃金も評価もなければ、まず賢い人から抜けていく。残るのは新人ばかり、という悪循環が起きる。
「時給が上がった」は経営努力じゃない
コンビニや飲食チェーンの求人票を見ると、相変わらず最低賃金ピッタリか数十円上乗せしただけの金額が並んでいる。法律が上げたから上げた、それだけだ。業務の難しさが上がった分を、経営側が自発的に評価して賃金に反映させた形跡はほとんどない。
自動化で仕事が複雑になった分を、経営側が自発的に賃金に反映させたケースはほとんど見当たらない。ロボット導入で浮いたコストは、スタッフの待遇改善ではなく設備投資や利益に回っている。
経営陣に問いたいこと
僕は経営者でもコンサルでもない。ただの配達員だ。でも毎日現場を見ているから、外から気づくことがある。
かつて「最低賃金で人を集めてマニュアル通りに動かす」モデルが成立していたのは、仕事が単純だったからだ。配膳もレジ打ちも、誰でも一週間あればこなせた。だから最低賃金で人が来た。
今は違う。ロボットが来て、残った仕事はぜんぶ「頭を使う仕事」になった。それでも採用の発想は昔のままで、最低賃金で募集をかけ続けている。仕事の設計だけが変わって、賃金の思想が変わっていない。そのギャップが、人手不足の正体じゃないかと思っている。
現場で働く人は楽になっていない。
おわりに
毎日ピックアップに行くたびに「今日も大変そうだな」と思う店がある。スタッフが必死に動いているのに、なぜか人手が足りない。そういう店ほど、ロボットや新しい機械が導入されていたりする。
人手不足を解決したいなら、まず「今の仕事は、今の時給に見合っているか」を正直に問うところから始めるべきだと思う。その問いを避けたまま求人を出し続けても、応募は来ないし、来ても定着しない。現場はそれをとっくに知っている。