日本の道路がクソすぎて
経済成長できない件
2026 UPDATE | 生産性・インフラ・政策
「日本の生産性が低い」と言われるたびに、ホワイトカラーの働き方改革だとかDXだとか、的外れな話ばかりが出てくる。違う。根っこはもっとシンプルだ。道路がクソなのだ。
1kmに5分かかる国の非常識
日本の市街地を車で走ると、1kmの移動に平均5分前後かかることは珍しくない。信号、細い路地、見通しの悪い交差点。それがアメリカの幹線道路なら、同じ1kmは1分もかからない。しかも日本の1kmはアメリカの3km分の迂回距離に相当することすら珍しくない。
なぜこうなったのか。理由は単純だ。日本の道路は江戸時代の農道や街道の上に近代を重ねたものが多い。区画整理ができていない。そしてその最大の原因が「用地買収」の問題だ。
用地買収は地権者一人が反対すれば止まる。道路計画に一軒だけ立ちふさがった家が、何十年も居座り続けるケースが日本中にある。法律がそれを許しているのだ。
アメリカには「エミネント・ドメイン(強制収用権)」がある。公共の利益のために政府が土地を強制取得できる制度だ。直線道路が作れるのは政治家の力量ではなく、法制度の設計の差に過ぎない。日本は個人への忖度を「優しさ」と呼び、社会全体のコストを何十年も見て見ぬふりをしてきた。
| 比較項目 | 🇯🇵 日本 | 🇺🇸 アメリカ |
|---|---|---|
| 用地取得 | 地権者全員の同意が必要 | 強制収用権で迅速に取得可能 |
| 道路設計 | 曲がりくねった既存経路をなぞる | 最短・最効率で直線設計 |
| 移動効率 | 1km=5分前後(市街地) | 1km=1分以下(幹線) |
道路の非効率が現場を殺し、ホワイトカラーを殺す
道路が非効率なら、現場が非効率になる。これは当然だ。配送ドライバーは同じ時間でより少ない荷物しか運べない。工事車両は渋滞で工期が延びる。営業担当は訪問件数が減る。
そしてここが重要なポイントだが、日本のホワイトカラーの仕事の多くは「現場の補佐」だ。製造・物流・建設現場が非効率であればあるほど、その尻拭いでホワイトカラーの仕事量が膨らむ構造になっている。
再配達の手配、納期遅延の調整、ルート変更の連絡、現場トラブルの報告書作成——これらは全て、インフラが機能していれば発生しない仕事だ。DXでペーパーレスにしたところで、根本の移動コストが改善されなければ焼け石に水である。
「ダブルワーカー時代」にインフラが追いつかない
かつての専業主婦モデルでは、一家の通勤者は一人だった。社会インフラへの負荷という観点では一定の効率性があったが、現在は「共働き」が標準だ。結果として何が起きたか。一家の通勤者が単純に倍になったのだ。
さらに子どもを保育園に預けるための送迎という「追加の移動」が発生した。夫婦それぞれの通勤+朝夕の送迎。一家が社会に放出する移動量は、以前の数倍に膨れ上がっている。
道路はどうなったか。整備が追いついていない。女性が労働市場に出たことで経済的なメリットはあったはずだが、社会インフラへの負荷増大というコストを政府は計算しなかった。移動コストを下げずに通勤者だけ倍にすれば、社会全体の非効率が加速するのは当たり前だ。
DXより先にやることがある
政府はDXや働き方改革を叫ぶが、その前にやるべきことがある。物理的なボトルネックを解消しない限り、デジタル化の効果は最大化されない。
本質的に必要なこと
① 用地収用法制の抜本改革:公共インフラのための強制収用を迅速化し、一人の反対で計画が止まる構造を終わらせる。
② 幹線道路の直線化・拡幅:迂回ルートを廃し、移動にかかる時間と燃料を物理的に削減する。
③ 移動を前提としない社会設計:リモートワークの徹底など、通勤という「移動そのもの」を減らす施策をインフラ整備とセットで進める。
生産性向上の最大のレバーはデジタルではなく、アスファルトの下に埋まっている。