iDeCoを勧められるたびに、同じ言い訳をしていた。
「少額だと手数料負けするらしいし、もう少し余裕ができてから」
その「もう少し」が、結局何年も続く。
① 23ヶ月前、とにかく始めた
深く考えず、とにかく口座を開いた。商品は先進国株のインデックスファンド一択。毎月5,000円が自動で引き落とされるだけで、正直あまり気にしていなかった。そして先日、久しぶりにログインして残高を確認した。
23ヶ月で払込総額に対して10.3%のプラス。手数料を引かれた後の運用元本108,304円で見れば17.1%増だ。年率換算で15.74%、直近1年だけなら26.88%。「手数料負けするから」と様子見していた人は、この利益を丸ごと逃している。
② 「手数料が高い」は本当か、数字で確認した
ログイン画面に累計手数料が表示されていた。6,696円。内訳はこうだ。
| 口座開設時の加入手数料(初回のみ) | 2,829円 |
| 月次手数料 国民年金基金連合会 105円 × 23ヶ月 | 2,415円 |
| 月次手数料 事務委託先(JIS&T)66円 × 23ヶ月 | 1,518円 |
| 月次小計 171円/月(固定)→ 年2,052円 | 3,933円 |
| 累計合計 | 6,696円 |
確かに高く見える。しかしこれは初回加入費用込みの、運用期間が短い時点の数字に過ぎない。月171円という固定費は残高がいくらになっても増えない。だから積み上がるほど、手数料率は自動的に下がっていく。
③ 時間が手数料を薄めていく
年率3%(保守的想定)と5%(先進国株インデックス長期平均水準)の2パターンで試算。緑背景の40年行に注目。
月5,000円(年60,000円)
| 経過年数 | 累計掛金 | 評価額(3%) | 評価額(5%) | 累計手数料 | 率(3%) | 率(5%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5年 | 300,000円 | 323,611円 | 340,096円 | 13,089円 | 4.0% | 3.8% |
| 10年 | 600,000円 | 697,990円 | 773,726円 | 23,349円 | 3.3% | 3.0% |
| 20年 | 1,200,000円 | 1,641,016円 | 2,040,954円 | 43,869円 | 2.7% | 2.1% |
| 40年 | 2,400,000円 | 4,640,893円 | 7,619,897円 | 84,909円 | 1.8% | 1.1% |
月20,000円(年240,000円)
| 経過年数 | 累計掛金 | 評価額(3%) | 評価額(5%) | 累計手数料 | 率(3%) | 率(5%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5年 | 1,200,000円 | 1,294,444円 | 1,360,383円 | 13,089円 | 1.0% | 1.0% |
| 10年 | 2,400,000円 | 2,791,960円 | 3,094,905円 | 23,349円 | 0.8% | 0.8% |
| 40年 | 9,600,000円 | 18,563,572円 | 30,479,588円 | 84,909円 | 0.5% | 0.3% |
④ 40年運用の破壊力
3,000万円の資産に対して手数料が8.5万円。これを「手数料負け」と呼ぶ人はいないはずだ。
⑤ 節税という反則技がある
| 月額掛金 | 年間節税額(税率20%) | 年間手数料 | 差し引き純益 |
|---|---|---|---|
| 月5,000円 | 12,000円 | 2,052円 | +9,948円 |
| 月10,000円 | 24,000円 | 2,052円 | +21,948円 |
| 月20,000円 | 48,000円 | 2,052円 | +45,948円 |
節税だけで手数料の約6倍を毎年回収している計算だ。40年間の節税累計額だけで、月20,000円なら約192万円。手数料8.5万円など完全に霞む。
⑥ 「もう少し余裕ができてから」の本当のコスト
📉 節税効果:掛金によって 年間約1.0〜4.6万円 を逃す
📉 運用益:直近1年の実績なら評価額の 26.88% を逃す
📉 複利の起点:1年分の雪だるまの核を丸ごと失う
23ヶ月前の自分は、手数料のことを深く考えず「とりあえず」始めた。結果的にそれが正解だった。
ただそれは時間が薄めてくれる。
節税は初日から働いてくれる。
運用益は始めた人にしか来ない。
「手数料が高いから」は、始めない理由にならない。
※ 節税額は税率20%(所得税10%+住民税10%)の概算。
※ 手数料は楽天証券(月171円、加入時2,829円)をもとに計算。